やはり「万病の元」だった糖尿病
ある病気が直接の原因で、勃起障害を引き起こすこともあります。
その最たるものが、糖尿病。
私の印象では、「糖尿病患者さんのほとんどが、程度の差こそあれ勃起障害を患っている」といっても過言ではありません。
「ガイドライン」によれば、糖尿病患者のED有病率は、EDの診断方法や対象患者で異なるものの、海外の自己記入方式の調査では35~46%、直接面接調査では36~65%、EDを判定するスコアである「国際勃起機能スコア一IIEF」による判定 では、71~86%と報告されています。
IIEFは15問のアンケートであり、その中で重要な5問だけを要約したアンケートはIIEF5と呼ばれ、広く勃起障害の診断に使われています。
また、わが国でのIIEF5による判定でも、42~90%という結果が出ています。
糖尿病患者が勃起障害になる確率は、そうでない人に比べ2~4倍も高いという現実があります。
しかも、普通の(という言い方も変ですが)動脈硬化などによる勃起障害に比べ、ED治療薬(PDE5阻害薬)が効きにくい印象があります。
「糖尿病ED」は、かかると非常に厄介なのです。
糖尿病は、その名称から「おしっこに糖が出て、足りなくなってしまう病気」と認識されているきらいがありますが、それは違います。
問題は高血糖(血液中のブドウ糖濃度が高い状態)が続くことにあり、尿に糖が出るのはその結果に過ぎません。
この高血糖状態が続くと、血管や神経を痛め、結果的に様々な臓器に合併症を起こすリスクを高めることになります。
要は、糖尿病は血管の病気でもあるのです。
勃起との関連で言えば、糖尿病は動脈硬化、神経障害のほか、陰茎の組織にダメージを与えることにより、EDを発症させます。
糖尿病で神経障害を患うと?
では、神経障害を患うとどうなるのでしょうか?
勃起は、脳の指令を勃起中枢が受け取ることによって起こるというお話をしました。
糖尿病が悪化すると、この司令塔(脳)と勃起中枢、陰茎の間の神経のシグナリングに問題が起きるのです。
脳が性的刺激を受けたとしても、そのメッセージがペニスまで届かなくなってしまうのですね。
また、悪いことに、高血糖状態は勃起のために必要とされる神経伝達物質(二酸化窒素HNO)の産生も阻害します。
糖尿病に関連する他の化学物質も、ペニスに血液が集まるのを邪魔する効果があり、結果的に勃起障害を引き起こしてしまう。
往々にして、これらの「悪材料」が重なることも、糖尿病由来の勃起障害の治療が「厄介な」所以です。
加えて、これだけ恐ろしい病気でありながら、特に初期の症状は「緩やか」で、それと気づきにくい。
勃起障害を主訴に泌尿器科を受診した患者のうち、自分が糖尿病だと認識していたのは17%で、空腹時血糖値を調べたところ、5%に新たな糖尿病が、ご1%に耐糖能異常(いわゆる糖尿病予備軍)が見つかった、という調査報告もあります。
当然のことながら、糖尿病の擢患期聞が長ければ長いほど、勃起障害になる確率も、それが重篤化するリスクも高まることになります。